お子様のアレルギーについて
小児アレルギーは、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹など様々な疾患があります。
アトピー性皮膚炎
かゆみと湿疹が慢性的に繰り返され、皮膚が炎症を起こしている状態です。具体的には、1歳未満のお子さまの場合は2ヶ月以上、1歳以上のお子さまの場合は6ヶ月以上の期間、皮膚湿疹の症状が続くと慢性的と考えられ、アトピー性皮膚炎の可能性が考えられます。
症状について
皮膚が赤くなってブツブツができたり、カサカサと乾燥して皮膚がむけたり、かさぶたができる場合があります。強いかゆみを伴う皮疹が生じて、バリア機能が低くなり、普通なら感じないような刺激でかゆみが強くなってかいてしまい、さらに皮疹を悪化させるという悪循環をたどることが多くなります。
治療について
アトピー性皮膚炎の治療は、スキンケア・薬物療法・原因の除去が大切です。
(1)スキンケア:
皮膚を清潔にして、積極的に保湿することで皮膚のバリア機能を保つケアのことです。
毎日の入浴やシャワー浴で、石けんをよく泡立てて、丁寧に洗いましょう。洗浄後はたっぷりと保湿をすることも大切です。手のひらに保湿薬を多めにとって、シワに沿って塗ると皮膚に広がりやすくなります。外用薬、クリーム、ローション、フォーム(泡状)、スプレーなどの剤形があり、皮膚の状態に合わせて使いましょう。
(2)薬物療法:
アトピー性皮膚炎の炎症は速やかに、確実にしずめることが重要です。炎症を抑えるための外用薬(ステロイド外用薬やその他の抗炎症外用薬)を塗ることで、治療を進めていきます。
外用薬は「塗る量」がとても大切です。下記の量を目安に、たっぷりと塗ります。
人差し指(第2指)の先端から第1関節部まで口径5mmの外用薬チューブから押し出された量(約0.5g)が成人の手掌(てのひら)2枚分で成人の体表面積の2%に対する適量です。
(3)原因の除去
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が低下しており、さまざまな刺激が悪化因子になることがあります。
ダニやホコリ、花粉、ペットの毛などの環境アレルゲンのほかに、化粧品や金属などによる接触アレルギーがあります。環境アレルゲンや接触アレルギーの原因を回避していきましょう。
また、唾液や汗、毛髪、衣類の摩擦などの刺激でも皮膚炎が悪化することがあります。唾液や汗は洗い流すか濡れたやわらかい布でふき取り、毛髪は短く切りそろえるか束ねて、刺激の少ない衣類を選びましょう。日焼けがアトピー性皮膚炎の悪化の原因になる場合があるので、炎天下では長時間にわたって太陽に当たらないようにしましょう。
食物アレルギー
食物アレルギーは、ある特定の食べ物を食べたり、触れたりした後にアレルギー反応があらわれる疾患です。
食物アレルギーの原因となる物質であるアレルゲンは、主に食べ物に含まれるタンパク質です。乳幼児の5~10%、学童期以降では1~3%が食物アレルギーと考えられています。子どもの頃の食物アレルギーは、多くが成長に伴いすこしずつ原因食物が食べられるようになります。一方で重度のアレルギーの場合は成長段階でも改善しないことがあり、何をいつから、どれくらい食べられるようになるかは一人ひとり、ゆっくりと経過をみていく必要があります。
症状について
食物アレルギーの症状は皮膚や、呼吸器、消化器など身体のさまざまな部位にあらわれます。およそ90%に皮膚症状、およそ30%に呼吸器症状や粘膜症状が認められます。
皮膚症状 | かゆみ、じんましん、むくみ、発赤、湿疹など |
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呼吸器症状 | くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒュー(ぜん鳴)など |
粘膜症状 | 目の充血や腫れ、涙、かゆみなど、口の中や唇、舌の違和感、腫れなど |
消化器症状 | 下痢、吐き気・嘔吐、血便など |
神経症状 | 頭痛、元気がなくなる、意識もうろうになるなど |
これらの症状は、1つだけがあらわれる場合もあれば、急に複数の症状があらわれることもあります(「アナフィラキシー」といいます)。アナフィラキシーの症状に、さらに血圧低下や意識障害など急激に全身の症状が進行する場合を「アナフィラキシーショック」と呼び、生命の危険にまで及ぶことがあります
治療について
(1)除去療法
原因となる食べ物を除去することです。例えば、卵アレルギーの場合は、卵を食べないように除去をします。食物アレルギーの患者さんでも、食品によっては少量を食べても症状が出ない、加熱するなど調理をしたら食べても症状があらわれない人もいます。症状が出ない範囲で摂取を継続し、必要最小限の除去が大切です。
(2)症状があらわれたときの治療
それぞれの症状の程度に合わせて治療を行います。じんましんやかゆみに対しては、抗ヒスタミン薬、咳やゼーゼー・ヒューヒュー(ぜん鳴)に対しては、気管支拡張薬の吸入などを行います。症状が重篤で、全身に及び急速に進行するアナフィラキシーではアドレナリンの筋肉注射が必要になります。
アナフィラキシーが起きたことがある患者さんは、日常生活でアナフィラキシー反応が生じたときに自分で治療薬を注射することのできるアドレナリン自己注射薬(エピペン®)が必要となる場合があります。当院でも処方可能です。この場合、使い方をしっかりと医師や薬剤師に習い、注射の仕方を間違えないようにしましょう。
小児気管支ぜん息
気管支ぜん息の特徴
呼吸をするときの空気の通り道(気道)にアレルギー性の炎症があるため、さまざまな原因に対して過敏に反応して気道が狭くなって、呼吸が苦しくなる疾患です。
症状について
ぜん息では、気道が過敏な状態です。ダニやホコリ、タバコなどの煙、運動でも、気道が反応して狭くなる症状(ぜん息発作)が起きることがあります。気道が狭くなると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(ぜん鳴)が生じ、呼吸するのが苦しくなります。
治療について
ぜん息の治療には、大きく分けて3つあります。
(1)ぜん息発作を治す治療(発作治療)
気管支拡張薬(メプチン・ベネトリンなど)
(2)気道のアレルギー性の炎症をしずめる治療(抗炎症治療)
吸入ステロイド薬(フルタイド・オルベスコなど)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア・キプレスなど)
☆普段発作がない時にも継続し気道の炎症を沈めることが重要です
(3)環境整備
ダニやホコリを減らす